モノづくりの象徴 3Dプリンター

近年急速に普及して、今やモノづくりの現場の象徴とも言えるのが「3Dプリンター」でしょう。モノボックスを運営するジャムハウスでは、書籍「3Dプリンター革命 ~モノづくり・ビジネスが変わる!」(水野操さん著)にて、3Dプリンターの仕組みからビジネスの可能性までを解説しています。


本書では、解説だけでなく、3Dプリンターが身近な存在になったときに、どのようにワークスタイルが変化するのかをわかりやすく読み物としても掲載しています。第8章では、「新時代メイカーズの午後」として、個人メイカーのワークスタイルを仮想ストーリーで展開しています。その一部を抜粋してご紹介します。


■新時代メイカーズの午後

 独立してインディペンデント・コントラクター(*1)として、企業組織のチェンジマネジメント(*2)を手伝っている中村武は、その日の午前中でクライアント先での仕事が終わった。午後は、クライアント絡みの仕事はないので、馴染みのコワーキングスペース(*3)で仕事をすることにした。偶然にも自宅近くにできたコワーキングスペースを中村はよく使用している。子供が小さいということもあるが、仕事をするにはどうも家では気持ちの切り替えができないのだ。それに、コワーキングスペースなら、様々な分野で独立して活躍している仲間とも触れ合えるし、集中して仕事することもできる。

 あと、もう一つ良いことがある。それは3Dプリンターの存在だ。新しいもの好きの、コワーキングスペースのオーナーは、モノづくり系のコワーカーがいるそのスペースのために、何か役に立てばと安価なパーソナルユースの3Dプリンターを6ケ月前に購入したのだ。そのスペースの会員なら、材料代だけを払えば誰でも使うことができる。

 それを見た中村は、内に秘めていたモノづくりへの気持ちを思い出したのだ。中村は元々メーカーでエンジニアをしていたが、まだ若いエンジニアという立場で思うような形で仕事をすることができなかったこともあり、徐々にビジネスの進め方や組織の方に興味を持ち、その後コンサルティング会社に転職をした。そこで、実績を積み、自信をつけた中村は独立した。元々実力もありクライントからの信頼もあった中村は、独立後もインディペンデント・コントラクターとして順調にビジネスを拡大してきたが、何かやり残したことを感じていた。それが何なのかよくわからないまま時間だけが過ぎていた。3Dプリンターを目にした時に、それがようやくわかった。

 本当に自分が作りたいものをデザインし、製造し、そして販売していきたかったのだ。大企業のように何万も売る必要はない。もっと小さな規模でも自分ひとりなら何とかなる。折しも、テレビやビジネス誌では、成功した一人メーカーたちが話題になっている。

 「自分だってできるはずだ!」

 そう思った中村は、すぐに自分もメイカーズになるべく動き始めた。元々は新しいことが好きなエンジニアだ。調べてみると、自分がメーカーにいた頃は考えられないような無償の3DCADまで存在していることがわかった。メーカーにいた頃の主流は2D CADだった。ようやく3D CADを導入するかどうかで、喧々諤々していたことを思い出した。自分のエンジニアとしての勘を取り戻すことと、3D CADに慣れようということで、まずは無償の3D CADで3Dによるモデリングに慣れてみることにした。

[(*1)インディペンデント・コントラクター] 高度な専門性を備えた個人事業者や一人企業で、業務単位の請負契約を複数の企業と結んで活動する。

[(*2)チェンジ・マネジメント] 企業の業務や組織に関わる変革を推進するためのマネジメント手法。

[(*3)コワーキングスペース] 異なる仕事をしている専門家や、異なる企業の人たちが集まって仕事をする場所。シェアオフィスとは異なり執務スペースはオープンなことがほとんどである。


ここに書かれているのは、未来の姿ではなく、既に実現可能なワークスタイルです。モノづくりに興味があり、より自由な働き方を手に入れたいと考えられている方は、ぜひ本書をお読みください。

  • 書名:3Dプリンター革命 モノづくり・ビジネスが変わる!
  • 概要:モノづくりに携わる企業、個人クリエイターの方(メイカーズ)、必読の書。
  • ブームに踊らされることなく、「3Dプリンター」の仕組みや活用の現場について、知ることができる!
  • 著者:水野 操
  • 定価:1,620円(本体価格1,500円+税)
  • ISBN:978-4906768196

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